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大阪高等裁判所 昭和46年(行ケ)4号 判決 1971年8月27日

原告 前川忠行

被告 大阪府選挙管理委員会

右代表者・委員長 戸田常蔵

右指定代理人・大阪府選挙管理委員会書記 福本善英

<ほか二名>

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告は「一、原告の異議申出について、昭和四六年五月三一日被告がなした決定を取消す。二、被告は昭和四六年四月一一日執行の大阪府議会議員東住吉区選挙区一般選挙における選挙を無効とする。三、訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、その請求の原因として、別紙その一およびその引用する別紙その二記載のとおり陳述し(た。)≪証拠関係省略≫被告指定代理人は、主文同旨の判決を求め、答弁として、別紙その三記載のとおり陳述し(た。)≪証拠関係省略≫

理由

原告は公職選挙法(以下たんに法という)二〇三条および二〇七条に拠り本訴を提起する旨主張するけれども、選挙訴訟(二〇三条)は選挙の管理・執行が法の規定に違反し、選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合に、その選挙の全部または一部の無効の確認を求める争訟であり、これに対して当選訴訟(二〇七条)は選挙の効力が有効であることを前提として、個々の当選人の当選を争う争訟であるから、一個の訴訟で選挙の効力と当選の効力とを併せて争うことは認められないのである。本件において、請求の趣旨と原因事実を総合して検討すると、その本旨は選挙の一部の無効を求める選挙訴訟であると解するのが相当である。

そこで進んで原告の主張する選挙の無効原因について判断するに、選挙訴訟で選挙の全部または一部が無効となるのは、前説示のとおり、選挙の管理・執行が「選挙の規定に違反する場合」であり、かつ、これが「選挙の結果に異動を及ぼす場合」に限られるのであって(二〇五条)、個々の選挙人、候補者等の選挙の取締りないし罰則規定違反の行為のごときは、これに当るものではない。けだし、かかる違法行為については、法はその違反者を処罰し、またはその違法状態を撤去させることにより、その規定事項の遵守を期待しているのであって、その違法行為のために選挙そのものを無効とする趣旨ではないと解せられるからである。本件において、原告の主張するところは、選挙期日の告示に先だち、東住吉区選出府市現職議員たちが共謀し、府市議会の新人候補者の進出を阻むため、三二の学校・幼稚園の投票所入口の最も人目につき易い場所に現職議員またはその身代り候補者専用の掲示板を設けることを決め、これに選挙運動用ポスターを選挙運動期間および投票当日まで掲示したというのであって(法一四五条一四七条参照)、要するに、選挙運動の取締規定違反を争うに帰するから、たとえ、原告のいう共同掲示板が公営の掲示場にまぎらわしいような印象を与え、区委員会がその撤去を命じなかったからといって、これによって直ちに不法な選挙運動、選挙干渉または選挙妨害が選挙区域に全般的かつ組織的に行われたものとして、選挙の自由・公正そのものが没却されたものとは認めがたい本件において、選挙の無効原因に関する原告の主張は、その主張自体理由がないといわなければならない。

のみならず、法一四五条一項の規定は、国、地方公共団体等が所有・管理するものに、法一四三条一項五号にいう選挙運動のために使用するポスターを直接掲示することを禁止するものと解せられるから、原告の主張するごとく、当該候補者の選挙運動用ポスターを掲示した物件、すなわちそのいわゆる共同掲示板を投票場である公立学校等の入口付近に置くことそれ自体が、直ちに右規定に違背するものとは認めがたい。

右の次第で、原告の本訴請求は、その他の点について判断するまでもなく、失当として棄却を免れないから、訴訟費用は販訴当事者たる原告に負担させることとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宮崎福二 裁判官 舘忠彦 潮久郎)

<以下省略>

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